DAZZLE

 プロローグ



そこは、都会の街だった。高いビルに、大きな道路。周りの風景はそればっかりだった。

少年はこの風景は夢だと悟った。なんとなく、現実味に欠けたふわふわした感があったからだ。

上を見れば黒い空が広がっていた。空には凛と輝きを放つ満月が浮かんでいた。

遠くを見れば、満月に照らされた大きな山が見えた。おそらくこの街は山と隣接しているのだろう。

少年は、じっとしているのも何だったので、夜の街を歩き出すことにした。

周りに街灯は灯っているが、ビルやマンションに明かりがほとんど灯っていない。

外からコンビニの時計を見てみると、2時だった。つまり深夜。

だが・・・

(妙にリアルだな・・・。)

そう。夢としておくにはリアル過ぎた。まるで、本当にそこにいるかのような光景。

試しに自分の頬をつねってみた。うん、痛みはない。

夢であることに間違いはないらしい。なら、暫く待っていれば自然と覚めるだろう。

そう思っていたそのとき、いきなり路地裏から銃声が聞こえてきた。
 

「うあっ!」

最初は自分が撃たれたのかと思った。が、幸い血が出ていない。

(まぁ、夢だから撃たれてもどうってことないケド・・・。)

だが、銃声というのは聞き捨てならない。日本という国の現代社会において、

銃の所持、及び都会での使用などもってのほか。

夢だからケガしても問題ないというのと、興味本意で路地裏へ走っていった。

奥で見たのは、目を疑う光景だった。ビルの壁のところに、大きな黒い大きな穴が空いていた。

ブラックホール、ワームホールを連想させるそれは、不気味にうごめく生き物のようにすら思えた。

そして、黒いスールを着込み、サングラスをかけた30代あたりの男が5人。その全員が、

その手にピストルを構えていた。

そして、黒いスーツの男達のピストルの銃口の先にあったのが、1匹の子狐だった。

先の銃に撃たれたのか、足から血が流れていた。

意味が分からない。黒い大きな穴?黒いスーツの男?子狐?

関連事項がまったく見当がつかない。

そうこう考えているうちに、黒スーツの男は少年の存在に気づいたようだった。

ターゲットが自分へと切り替わる。ターゲットの切り替えは、

ただの夢から悪夢への切り替わりを同時に意味していた。

そう簡単に抑えられるようなものではなかった。とにかく逃げることのみに集中した。

が、ズガンッ という音が響き渡った。



「!」

少年はその場に倒れこんだ。足を撃たれてしまったのだ。

「ハァ・・・ハァ・・・。」

恐怖が大きすぎた為に声が出ない。足を撃たれた上にすくんでしまっている。

歩くことはおろか、立ち上がることすら困難だった。

「く・・・。」



絶体絶命とはまさにこのことだった。銃口はすでに少年の頭に照準を合わせていた。

もうだめだ、と思った。

そのとき、ゴガン という音が聞こえた。銃声かと思ったが、その考えはすぐに捨てた。

黒スーツは手を動かしていない。それに、黒スーツは全員少年とは見当違いな方向を向いていた。

少年は黒スーツの視線の先を追った。

最初に目に映ったのは崩れた大きなコンクリートの山だった。

先ほどのゴガン という音はこれが原因だということはすぐに分かった。

理解に時間を要したのは、もう一つ別のものだった。コンクリートのさらに奥。

銀の光を放つそれは、はじめは目のように見えた。

太陽と称してもよかったかもしれないソレは、しかし、決定的に太陽と呼べない理由があった。

ソレの中心には、先の子狐がいた。その光は大きく耀いて、全てを包み込む。

少年はまぶしさに目を閉じた・・・

 

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