第一部 魔法の村
レインが家を出て1週間が過ぎようという頃。レインは森の中で倒れてしまっていた。
空腹と疲労によって。
このまま死んでしまうのかとレインは瞳に悲しげな影を落とし、意識を失った。
「ぅ・・・ん・・・?どこ?ここ・・・。」
あたりを見回すと、小奇麗な小屋のベットにレインは寝ていた。
とても質素で、家具などもそう多くは無いが、
どうも心を落ち着けてくれるような香りがする。それにとても温かい。
「あら?おきたのね。あんた、森の中で倒れてたのよ?うちの子供達が見つけないと
危ないところだったのよ。この辺は夜に狼が出るからね。」
気さくそうなおばさんがドアを開けて部屋に入ってきてレインの横に座る。よくみると、
ドアの入り口に隠れている子供が2人。男の子と小さな女の子。
「危ないところを助けていただきありがとうございました。ありがとね。」
おばさんと、ドアに隠れている二人に笑顔を見せるレイン。
と。きゅるるっとレインのおなかがなった。
「・・・・・・。」
顔を真っ赤にして伏せるレイン。
「あはは。そっか。お腹が空いて倒れてたってとこかい?」
「・・・。」
コクコク頷くレインにおばさんは笑顔で
「よし。それじゃちょっと待っておいで。さっきの昼食の残りを持ってきてあげるから。」
そういってドアの向こうに消えていった。入れ替わりに、二人の子供達がレインの下へ。
「えっと。こんにちは。私はレイン。あなたたちのお名前は?」
「僕マッティ。」
「私はユリィ。」
「マッティにユリィね。よろしくね。」
[うんっ!]
二人声をそろえて返事をする。
「えっと。ここはどこなのかな?私、遠い所からきたの。」
「えと。えと。ここはリィス村なの。私達家族を含めて50人くらいが住んでる村なの。」
「僕等は、ここで生まれてここで育ったの。他の村の人に会うのは初めてなんだ。
他の村のお話聞かせてー!」
レインは少しためらいながらも話した。
「私は。どうやってここまできたのかわからないくらい、森をさまよってきたの。
もうどっちの方かもわからない。ただ。私は家を飛び出してきたの。
お父様に裏切られて。私がいたところは、小さな村。だけど、とっても活気があって
とても科学が発達してたわ。お父様の研究もその内の一つだった。だ、だけど。私はっ・・・。」
話ながらにして目に涙を浮かべる。
「えっと。ごめんなさい。」
マッティがおろおろしながら謝る
「いいの。大丈夫。うん。村のお話をするね。ここのように森の中にあったわけではないの。
大きな湖のほとりに開けた土地があって、
そこに村は作られていたの。湖のおかげで水にはまったく困らなかったわ。
それにお魚がたくさん取れたし。
とっても豊かで、とても暖かい村。」
話すうちにレインの顔に笑顔が戻ってきた。それをみてマッティは安心したのか
「へぇ!いいなぁ。僕等の村には特に面白い事もないし。」
ユリィも頷く
「そう。私達はいつも退屈なの。でも大人になったらやる事がいっぱいなの。」
マッティがつなぐ
「そう!大人が忙しいから子供は暇なの。遊ぶにしても限りがあるし。
回りは森だから迷ったら大変と親が・・・。」
二人の話す様子を見てレインは笑いながら
「二人はとっても仲がいいのね。言葉を二人で繋いで遊んでるみたい。」
といい、二人は声をそろえて
[うんっ]
3人で楽しくしゃべっている間に二人の母親がお盆にご飯を乗せて持って来た
「はい。残り物でごめんなさいね。」
と言うが、とても軟らかそうなパンに、湯気の立つ美味しそうな野菜スープ、
何の魚かは分からないけどムニエル。
「いえ。すごいです。とっても美味しそう。いい匂い。」
レインは美味しそうにスープを口へ運ぶ。
「どう?おいしい?」
ユリィが不安げに聞く
「うん。おいしいよ。こんな料理を毎日食べられるユリィとマッティは幸せだね。」
それを聞いてユリィとマッティのお母さんは吹き出した。
「あはは。やめとくれよ。あんた、レインって言うのね?私はルシィ。気軽にルシィと呼んでおくれ」
「わかりました。」
レインがご飯を食べ終えると、ユリィとマッティとは部屋から出て行った
「もうちょっと寝てな。疲れているだろう。」
とルシィもカーテンを閉めてレインが寝つきやすくして部屋を後にした
レインは心の中で少し震えていた。今もレインを追いかけてきているだろう影の未雨。
レインはどうすればいいか分からなかった
「おとうさま。どうして。」
頬を一筋の涙が伝う。いつもはお父様と呼んで、少しでも迷惑のかからないように
頑張っていたレインだがやはりまだ少女。
おとうさまに甘えたくて。甘えたくて。でも甘えれない。そんな悲しい心のライン引き。